2026.11.01

第6話 現場で知った、水の本当の怖さ

ブログ 経営者ブログ

超高層給排水の経験を、次の世代へ

「水が漏れた」  「配管が詰まった」
たったこれだけの言葉ですが、建設現場では時として重大な意味を持ちます。

   (汚水配管の詰まり)               (ポンプの空運転で熱膨張した塩ビ管)      

水は人間の都合など待ってくれません。ほんの小さな判断ミスや設備の異常が、取り返しのつかない事故につながることもあるのです。

私は長年、超高層ビルの仮設給排水工事に携わり、その怖さを身をもって経験してきました。

現場は決して図面通りには進みません。配管ルートの突然の変更、想定外の施工条件、予期せぬ設備トラブル。何十階もの高さへ水を送り、排水を安全に処理する。その一つひとつに、技術者としての判断と責任が伴います。

仮設給排水は、建物が完成すれば跡形もなく姿を消します。しかし、工事中は現場を支える大切なインフラです。

水が止まれば、現場が止まる。

そして、流れてはいけない場所へ水が流れれば、わずかな時間で大きな被害を生むこともあります。

私自身、過去にポンプの異常による大規模な漏水事故を経験しました。現場の状況を目の当たりにした時の緊張感、応急対応に追われた時間、関係者への謝罪、説明、そして報告書の作成。

一つの事故が、どれほど多くの人や工程に影響を及ぼすのか。あの時、私は水を扱う仕事の責任の重さを痛感しました。

水は便利であると同時に、扱い方を誤れば恐ろしい存在にもなる。

だからこそ、経験だけでなく、正しい知識と確かな判断力が必要なのです。

そして、私は次第にこう考えるようになりました。

「自分が現場で経験した怖さや失敗を、次の世代にどう伝えていけばよいのだろうか」

技術を身につけることと、人に正しく伝えることは別の話です。

私はその後 ご縁があって、配管高等職業訓練校と大阪府の高等職業技術専門校とで本業の傍ら、合わせて8年間にわたり配管に関する座学の講師として教壇に立ち技術教育に携わる機会をいただきました。そこでは多くのことを学ばせていただきました。

そこで痛感したことがあります。

「自分が理解し、仕事ができること」と「その技術を人に教えられること」は、まったく別の能力だということです。

自分では当たり前に理解している知識も、初めて学ぶ人には簡単には伝わりません。

現場で身につけた経験を理論と結びつけ、相手が理解できる言葉に変えていく。教えるためには、自分自身がより深く理解していなければなりません。

教壇に立ちながら、私自身も何度となく学び直すことになりました。

どれほど優れた技術や豊富な経験があっても、それが一人の頭の中にしかなければ、いつか失われてしまいます。

経験を知識に変え、知識を次世代へ伝え、安全に仕事ができる環境をつくる。

それこそが、技術を受け継ぐ者の大切な役割ではないでしょうか。

水の怖さを知っているからこそ、正しく伝えたい。

現場で培った対応力と、8年間の教育経験。その両方が、今のケイトップの技術教育と人材育成を支える大きな財産となっています。